あさりを食べて思い出す近鉄の潮干狩りツアー臨時列車

最近スパゲッティボンゴレとかクラムチャウダーとかあさりの味噌汁が食べたくてですね、久しぶりにスーパーであさりを買ってきたんです。小さい頃はふつうに見てましたけど、大人になってから見ると結構気持ち悪いですね。管がうにょ~って伸びるの、見入ってしまいますけど不気味です。

▲こいつは関係ないです

あさりといえば思い出すのが、近鉄の潮干狩りツアー。小学生の頃、3回ぐらい家族で参加したことがあります。

近鉄といえば、みなさんご存知のように日本最大の路線網を持つ私鉄ですが、グループ会社に「志摩マリンレジャー」という会社があります。近鉄本体からすると孫会社にあたります。三重県の志摩の観光開発を担う会社です。旧国名で三重というとだいたい伊勢と伊賀を思い浮かべるところですが、志摩半島の先っぽだけ志摩国なんですね。あと南部は紀伊です(和歌山だけでなく三重南部も紀伊)。

今の自治体で言うと志摩国はだいたい鳥羽市と志摩市にあたり、駅で言えば鳥羽や賢島といったところです。そのあたりに近鉄は志摩スペイン村に代表されるような観光レジャー施設をもっています。近鉄とは直接関係はありませんが、ジュゴンがいることで有名な鳥羽水族館もありますね。私も2回ぐらい行ったことがあります。ちなみに近くにある伊勢神宮はもちろん伊勢国なので志摩国じゃありませんよ。

そんな鳥羽の沖合に、日向島(ひなたじま)という小さな島があります。上空から見るとイルカの形をしているので「イルカ島」と呼ばれており、先の志摩マリンレジャーという会社がこのイルカ島の観光開発をになっているのです。蛇足ですが……イルカ形に見える島というと、ゲームの「スーパーマリオサンシャイン」に登場するドルピック島を思い出しますね。あれもバカンスを過ごす南の島という設定でした。

イルカ島の観光ツアーの一つとして、近鉄が潮干狩りツアーを企画しています。私が参加したのはもうずいぶん前、小学生のときでしたから10年以上は前ですが、今でも続いているようです。人気なんですね。

このツアーのシーズンは毎年5月か6月頃です。参加者は近鉄の沿線、大阪や京都から募集しているおり(たぶん名古屋発のもあると思います)団体臨時列車が仕立てられるのですが、この列車が鉄ヲタ的にもなかなか面白い列車なのです。京阪地区からは上本町発、京都発、そして阿部野橋発と3地区から募集しているのです。上本町と京都からは、普段特急が走っているルートと同じでとくに代わり映えしないのですが、阿部野橋からのはツアーでしか見られないような走り方をするのです。

わざわざ団体専用列車を用意するぐらいですから、普通は目的地まで直行し途中で乗り換えさせるようなことはしません。実際、上本町発と京都発は途中駅にとまり各駅からの乗客が乗りはしますがあとは鳥羽まで直行します。ところが、阿部野橋発のだけはそうはいきません。元々路線の都合で橿原神宮前まで行かなければいけないのはもちろんなのですが、そもそも線路の幅が違うので直通できないのです。(フリーゲージトレインなんてまだ日本では実用化されていませんよ!)

私は南大阪線沿線に住んでいましたから、阿部野橋発のツアーを利用しました。最寄り駅は針中野時代と今川時代がありますが、阿部野橋発着の列車に針中野や今川から乗っていました。この車両は普通列車用と同じいつもの車両です。途中駅にいくつかとまりながら乗客を拾いつつ、橿原神宮前まで向かいます。

橿原神宮前駅で南大阪線と橿原線が接続していますが、南大阪線は狭軌、橿原線は標準軌なので乗り入れできず、乗り換えなければなりません。しかも、両線のホームが結構離れているのです。けれど橿原線のホームのうち、1線だけ狭軌用の線路とホームがあるのです。橿原線の列車は全部標準軌車両なので普段はこのホームは使われていないのですが、こういった臨時列車がたまに利用します。

南大阪線から来た列車は、一度橿原神宮前駅を通り過ぎて吉野線側に引き上げます。その後、折り返して橿原線の狭軌ホームに到着するのです。そして、ホームの向かい側の標準軌線路には鳥羽行きの「あおぞらII号」がとまっており、対面で乗り換えができるのです。

面白いところはそれだけではありません。この列車、橿原神宮前を出てすぐの大和八木で橿原線から大阪線へと乗り入れしますが、普段旅客列車は使用していない連絡線を通るのです。大和八木には連絡線があり、1つは京都方面と伊勢・名古屋方面を結ぶ線路、こちらは特急列車が毎日通っていますが、もう1つの橿原方面と難波方面結ぶ線路は回送しか通っておらず、乗ることはできないのです。

この潮干狩りツアー、団体専用車両のあおぞらIIに乗れるだけでも結構価値があるのですが、阿部野橋発コースではこの普段使わない2箇所の線路を堪能することができるのです。しかも、大和八木の連絡線は鳥羽向きではなく難波向きに繋がっているため、本線上で停車して折り返しスイッチバックをするというおまけつき!これには子供ながらわくわくしていました。というのも、あおぞらIIには車内にモニター、更に前面後面にカメラがあり、飛行機のように前後の様子がモニターに映し出されているのです(乗ったのは既に廃車になった旧・あおぞらIIで、新あおぞらIIにはモニターはないかもしれません)。

▲あおぞら号の写真もってないのでスナックカーで許してね

あとは鳥羽まで行って船でイルカ島に渡り、潮干狩りと魚つかみをやって帰ってくるだけですが(それが本番なのですが)もちろん帰りも同じルートを通ります。2度堪能できるわけですね!しかも帰りはもう一つ面白いことがあります。

八木で大阪線から橿原線に移る際、橿原線の上り線と平面交差します。上り線から下り線に入るための亘り線があるのですが、この亘り線が八木西口駅のホームのど真ん中にあるのです!日本では、ホームのど真ん中に亘り線があることってほとんどありません。というのも、ホームの真ん中にあると、車両が通るときに車体がホームにぶつかってしまうのです。

これは三島駅の写真ですが、亘り線があるところのホームが削られているのが分かりますか?車両がホームにぶつからないようにその部分だけ削っているのですが、八木西口ではぶつからないのか、削られていないみたいです。八木西口の亘り線も普段は回送列車しか通らないので、味わえるのはこの潮干狩りツアーの帰りぐらいしかありません!

狭軌車両と標準軌車両を乗り継ぐからこそ味わえるこのツアー。どちらか一方の連絡線だけを体験乗車するツアーはたまにあるとは思いますが、両方を味わえるツアーはそうそうないでしょう。南大阪線沿線に住んでいたからこそ当たり前のようにこんなツアーに参加していましたが、実際に小学生で乗ったときはそこまで鉄道要素を考えていたわけではなく、ただ変わった走り方をするのが面白かったことと、子供にとっては鳥羽まで乗る時間は長かったなぁということぐらいしかありません。

あと思い出といえば魚をつかむのが痛そうであんまりやらなかったのと(持ち物に「軍手」が書かれてはいましたが)、浜辺のあさりが業者の仕込みだってことぐらいです。家帰ってから母が言ってました。帰った後の数日間はあさり料理の日々でしたね。

あくまで目的は海産物をゲットしにいくことですから鉄道好きだからといってこのツアーに申し込むことはおすすめしません!というか、だいたい子供がいる家族連ればっかりが参加していますし座席も相席になりますから、鉄ヲタが1人で行っても楽しめないでしょう……。私も今は行きませんよ(笑)。たぶん今後もこのツアーが鉄ヲタから日の目を浴びることはないでしょう。ある種、たまたま南大阪線沿線に住んでいたから味わえた特権かもしれません。ただ家族がいる人であれば、潮干狩りも楽しいですからとてもおすすめですよ!上本町や京都の方が近いのに無理して阿部野橋から乗ることはないと思いますけどね。

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