日本海新聞の報道によれば、智頭急行が中期経営計画にスーパーはくと用車両の置き換えを盛り込む意向を示したようです。
スーパーはくと 車両更新へ 24年度から順次
http://www.nnn.co.jp/news/180301/20180301078.html
先日JR四国の”TSE”2000系気動車が引退することが発表されましたが、このスーパーはくと用のHOT7000系も同様の振り子式気動車で、振り子式特急型気動車の引退が非常にタイムリーな話題となっています。
智頭急行といえば、全国の第三セクター鉄道の中では珍しく黒字経営であることが知られています。ほかの黒字経営会社といえば、かつては北越急行が有名でしたが、北陸新幹線の開業によって特急はくたかを失ってしまいました。愛知環状鉄道なんかは黒字と赤字をいったりきたりしているようです。伊勢鉄道なんかも智頭急行同様特急列車の収入が大きかったようですが最近は赤字だと言います。智頭急行と同じく鳥取県内の若桜鉄道も黒字ですが、あちらは特殊で上下分離を行っているためという事情があります。
そしてその智頭急行の黒字経営を支えているのが、看板列車である特急「スーパーはくと」の存在です。京阪神と鳥取県を結ぶ速達列車で、特に鳥取県側にとってはなくてはならない存在です。それまで大阪と鳥取を結ぶ列車といえば、福知山線・山陰本線回りか、岡山まで新幹線で出て津山線・因美線回りで行くぐらいしかなく非常に時間がかかっていました。山陽本線の上郡と因美線の智頭を結ぶ智頭急行が開業したことによって大阪と鳥取の所要時間は大幅に短縮されました。京都・大阪から鳥取・倉吉へは「はくと」が、岡山からは「いなば」が運行されました。「はくと」は運行開始当初は国鉄型の181系気動車で運転される列車もありましたが、その後智頭急行所属のHOT7000系に統一、またいなばも181系からJR西日本の187系に更新されています。
この車両がまたJR四国の2000系に負けず劣らずの車両で、あちらを上回る最高速度130km/hで山陽路・因幡路を爆走しています。新快速街道のJR神戸線はもちろん、高速走行に対応した設備を持つ智頭急行でも130km/hでの運転が可能となっています。
10年ほど前にリニューアルもされましたし、見た目からしてもまだまだ新しい最近の車両だと思うところもあったのですが、実際にはもうすでに24年経過しているようです。私とほぼ同じくらいの年なんですね(私が1993年生まれ、智頭急行の開業が1994年)。振り子を利かせて高速で走るのはやはりなかなかの負担になるのですね。
とはいえ、今すぐ置き換わるわけではありません。智頭急行の株主である鳥取県の知事は2024年を目途に車両を更新したいとしています。あと6年ですから、登場してから30年で引退ということになります。まぁ、鉄道車両の寿命としてはふつうぐらいの年齢ですね。
黒字経営によって積み立ててきた基金があるので車両更新を行うにあたって費用上の問題はないようです。「山陰新幹線の構想もあり今後どうなるかはわからない」としていますが、今のところ山陰新幹線が実現しそうな気配はないですし、建設が決まったとしても開業は相当先のことになるでしょう。人口減によってそもそもの利用者が減ることは考えられますが、今の調子の経営を続けていけばしばらくは安泰なのではないでしょうか。今後の利用者を確保するためにも、やはり新型車両の投入は必要になってくるでしょうね。
気になるのは、振り子装置を搭載するかどうかというところです。もちろんまだ何も決まっていないでしょうが、設計を決めるにあたって重要な点になるのは間違いないです。というのも、今全国的に振り子式車両から簡易的な傾斜装置に置き換わりつつあるからです。どうしても振り子装置は設備が複雑で一般の車両に比べると整備が難しくなっています。新幹線用のN700系の登場以降、よりシンプルな車体傾斜装置でもある程度の高速走行が可能になり、またあるいは振り子式車両より若干低い運転速度であっても所要時間上のデメリットが減ってきたため(もしくは整備のデメリットが増えたため)、傾斜装置を搭載しない車両で置き換えられることもでてきました。
その一方で、JR四国が新たに投入した2600系は、やはり簡易的な車体傾斜装置(空気ばねによるもの)を備えて登場しましたが、曲線の多い土讃線で空気容量が足りなくなり、結局別途振り子式車両を新規製造することになってしまいました。JR西日本の伯備線でも車両置き換えが検討されていますが、JR四国の車両を借りて振り子にするか空気ばねにするかを決める試験走行が行われています。
スーパーはくとの走行環境がどうかというと、もちろんJR神戸線(東海道・山陽本線)区間は線形が良いですし、智頭急行線内も比較的良い線形となっています。山陰本線の鳥取~倉吉も同線の高速化工事によってだいぶ良くなったので、曲線が問題になるとすればせいぜい因美線の智頭~鳥取ぐらいになっています。この区間の占める割合は全体からすれば少ないので、空気ばね傾斜装置でも十分かもしれません。
先鋭的で精悍なHOT7000系気動車ですが、ぜひとも後継車両もこれに見劣りしない性能とデザインをもつ車両になることを期待したいですね。