生きがいとは何か? ―――好きで、得意で、稼げて、必要とされること

以前、ツイッターで上のベン図が話題になりました。元々は英語で書かれたもので、この画像自体が私が個人的に日本語化したものとなります(3つ重なっているところの訳が微妙なのですが許してね)。原語版はこちらで見てください。

https://www.weforum.org/agenda/2017/08/is-this-japanese-concept-the-secret-to-a-long-life/

そうです、「生きがい」についてわざわざ英語で説明された記事が元なのです。日本人なら誰もが知っている単語「生きがい」ですが、果たしてそれがなんなのか、非日本語話者に対して説明された文章だというわけです。それがまた日本に逆輸入され、話題となり、改めて「生きがい」とは何かを考えさせられるきっかけになりました。

このベン図では「好き+得意=情熱」「好き+必要性=使命」といったことが示されています。

さて、とりわけ日本にいて見逃されがちなのが、原語でPaid forとされている箇所、直訳すれば「誰かがあなたに支払ってくれること」という意味ですが、つまりは「稼げるかどうか」ということです。単に「生きがい」といえば、誰しもが持っているものであり、年齢に関係ないことだと(日本人なら)捉えると思います。つまり、10代の学生や、退職した高齢者でも持っているものだということです。しかし、人生という全体を見れば、その多くの期間は仕事に費やされています。「稼げる」ということをないがしろにすることはできません。

ただ、原語では単にearn(=稼ぐ)ではなくbe paid forとされているので、金に限らず広い意味で誰かが自分に支払ってくれるもの、という意味が含まれているかもしれません。

そして「稼げる+必要性=天職」の部分。原語ではVocationとされています。「天職」という表現はvocationの直訳で少し言い過ぎかもしれませんが、このことからも「生きがい」において「働くこと、労働」が重視されていることがわかります。

そうです。「生きがい」は「天職」よりさらに上なのです。天職でさえ誰もが簡単に見つけられるものではないのに、その上「好き」で「得意」でなければいけないとは、なんとハードルの高いことでしょう。

さて、ここまでは全体的なお話。これを自分自身にあてはめたらどうなるか?みなさんも考えてみましょう。

このウェブサイトのタイトルにもしている通り、私は2年ほど前から自ら勝手に「鉄道旅行家」を名乗り、それで稼いで食っていくことを目的に活動を始めました。2年たった今、商業出版で本を出せるなど稼ぎに繋がる活動も少しずつ増えてきてはいますが、それで生きていくには程遠くほとんど毎日アルバイトをしている状況です。そして、最初に自主制作本の印刷費のために金を借りて以来、旅やら即売会やらなんやかんやで金を使い込み、気が付けばクレジットカードなんかも合わせて借金が200万円弱。

いろいろやりたいこと、稼げそうなことはたくさん思いつくものの、まず最初にやるための元手がなく、かといってこれ以上の融資も到底望めない状況。金に追われるたびに、どうすれば稼げるようになるか、仕事が増えるか、やりたいことをやれるか、ずっと考える日々が続いています。金が足りなくなれば顔面蒼白、心身ともに衰弱して家で寝込んでいるだけ、ちょっと金に余裕ができればいつも通りにのんきで楽観的に適当な日々を過ごして調子に乗ってまた足りなくなる。抜本的な解決はできないまま、早く風呂のついた家に引っ越したいなぁ、アルバイトやめたいなぁと思いながら東京に来てもうすぐ6年になります(東京に来た目的自体は別の理由ですが)。

そして、年末。最初にこの「生きがい」の画像を見たのは去年の10月頃ですが、ふと思い出して改めて見ていました。自分が好きなことは何か、得意なことは何か。そして何なら稼げて、何が世の中に必要とされているのか。

もちろん、私の好きなことは「鉄道」であり「旅」であり、それが得意なことにも繋がっていました。そして、私のできる稼ぎに繋がることはたとえば「文章の執筆」や「写真撮影」。実際に本の出版もやってきました。

ところが、そもそも「好きなこと」が間違っていたのです。確かに、鉄道を利用して旅に出るのは小さい頃から大好きでした。だからこそ高校3年生までにJR線乗車率99%になるなど、ずっと旅を続けてきたのです。好きでなければそこまでできませんからね。でも、それを単なる「趣味」から「仕事」に移していくにつれ、「好きなこと」から「得意なこと」に移動していったのです。それに気が付いたのは、年末のコミックマーケットを迎えたころでした。

活動を始めてまだ2年目で、私自身即売会で自分の本を販売している経験は少なくコミックマーケットは今回が2度目ですが、ほかのイベントを含めると2年間で7回ほどになり、多少なりとも感覚を掴みつつはありました。そんな中、私が大阪に住んでいたときからの知り合い(中学、高校の同級生)で東京に来てからも月に2回以上は家に行っているという人がコミケに初出展することになったのです。ジャンルは全く違うのですが、私は「鉄道・旅行・メカミリ」ジャンルの中の鉄道系サークルで、その彼は「男性向(要するに18禁のエロ漫画)」で、たまたま同じ3日目の12月31日に出展しました。サークルの配置場所自体もそこまで遠くなく、出展中にも何度か顔を出しに行っていました。

私が持ち込んだのは、一昨年自主制作で出した「北海道の廃駅2016」という本と、去年初の商業出版として出した「北海道の廃駅2017」という本で、合わせて100部ちょっとぐらいでした。1年前にコミケに出たとき70部売れて完売してしまったので(途中で足りなくなって委託書店から取りに行ったもののそれもなくなった)、今回もそれぐらいはいくかな~と思って持ってきていました。

一方彼は600部刷って、会場には300部、委託書店に300部送ったと言っていました。彼自身初参加で、私もどれくらい刷るのが妥当なのかジャンルが違うこともあって全く見当もつかず、どう転んでもおかしくない状況でした。

ところが、ところが……蓋を開けてみると私が6時間の会期中で43冊売る中、彼は開始からたった1時間で300冊全部を売り切ってしまったのです。10時から11時までの1時間で300冊、ざっと12秒に1冊売っている計算になります。私が10時台の1時間で売ったのはたった2冊でした(しかも1冊は知り合いの方)。

もちろん、値段も違いますし、本のページ数も内容も全く無関係です。参考までに、私が売った「2017」の方は2800円でA4の120ページ、彼が売ったのは500円でB5の18ページのものでした。つまり、売上だけで言えば私の方が稼いだことにはなります(ただし商業誌なので私の取り分は30%なのですが)。ところが、彼の方は委託していた300部もあっという間に完売、今まさに増刷をかけているという状況で、結局総額でも稼ぎは私を上回ってしまいました。

私が気にしていたのはその同級生の彼だけではありません。鉄道系の方にもいました。ふと周りを見渡せば、いつまでも途切れることなく人が並び、みるみるうちに在庫が減っていくようなサークルがあるのです。私が目指していたところ、私が夢見ていた次々と本が売れる人気サークルが目の前にあったのです。私はただ悔しい思いしかありませんでした。

どうして自分は人気がないのに、ほかの人は好かれているのだろう?何が間違っていて、何が足りないんだろう?いつも考えてはいたことですが、そのとき改めて考えさせられました。

もちろん、私の方にも大事にすべきお客さんが来てくれました。先に挙げたサークルと私との違いは、とにかく私の売っているものは質の高いものであること。38万円の印刷費をかけて同人誌を刷る人なんて普通はいませんからね。内容も、「2016」の方は同人にも拘らず商業誌に負けず劣らずの出来で、実際そのおかげで「2017」を商業誌化できたわけでもあります。2冊合わせて買ってくれた人、合計で5000円も払ってくれた人が何組もいます。500円や1000円、あるいはそれ以下の商品のサークルが多い中、一度に5000円使ってくれるサークルはそうそう多くないと思います。私がやってきたことにそれだけの価値があることは、間違いなく自信を持って言えることです。ほかにも良い出会いがありました。

そして、売れ方の流れ、売れ行きの方向性に気が付きました。私のサークルは10時台はたった2冊しか売れませんでしたが、時間が進んでいくにつれだんだん手に取る人が増え始めたのです。前を通る人も増え、実際に買ってくれる人も何人も現れ始めました。多趣味で多様な人間が混在する空間で、たまたま出会ったものが買いたくなるほど惹きつけられることはあまり多くはないかもしれません。ですが、私の作品を心に留めてくれる人がいたのは、ひとえにそれだけ作品の質が高かったからだと自負しています。それはとても嬉しいことで、ありがたいことです。ここにしかない出会い、「偶然」とか「たまたま」とかで買ってくれる勝負ができたのは、力を注いできた価値があるというものです。その分、たまたま見つけて気に入ってくれたものの値段が高すぎて諦めた人も多くいました(2800円なんて正直高いですからね、自分だったら企業ブースならともかく個人サークルならよほどじゃないと買わないと思います)。

けれど、私がやりたかったこと、好きだったことは、それとは違ったことだったのです。私が目の前で見ていたのは、違う売れ方をしていたのです。

つづく

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