あまりにも衝撃的なニュースが飛び込んできました。LCCのピーチとバニラが統合するんだそうです。どのくらい衝撃的かというとローソンとファミリーマートが統合するくらいの衝撃です。みずほと三井住友が統合するくらいの衝撃です。チェコとスロバキアがビロード再婚するくらいの衝撃です。
日本のLCC元年と言われた2012年。国内初めてとなるLCCとして運行を開始したのは、関西空港を拠点としたPeach(ピーチ・アヴィエーション)でした。元々、フルサービスキャリアであるANA系列の会社として誕生しました。
次いで運行を開始したのがオーストラリアのLCC、ジェットスターの日本会社であるジェットスター・ジャパン。私が初めて利用したLCCもジェットスター・ジャパンでした。こちらはJAL系列のLCCであり、後にジェットスターはJALと正式に提携を開始、国際線乗継便でコードシェアを始めました。それまでJALは国際線接続の国内線として成田からの関西線などを運行していましたが、一部を除いてジェットスターとのコードシェア便に移管されてしまいました。私は接続便として利用したことはないですが、JALのきっぷを買ったのに狭い座席のジェットスターに乗らされることになります(ヨーロッパなどでは割りとあることなのですが)。
そして、これら2社と肩を並べる日本3大LCCのもう1つがバニラエア。こちらはピーチと同じくANA系列ですが、現在の形になるまでには複雑な経緯がありました。当時日本3番目のLCCとして「エアアジア・ジャパン」が名を馳せていたことは知られていると思います。エアアジアはマレーシアの会社で、ジェットスター・ジャパンの例と同じく日本会社としてエアアジア・ジャパンが設立されました。しかしいざこざがあり、エアアジアは一度日本から撤退することになります(現在のエアアジア・ジャパンとは名前や母体は同じですが別物です)。しかし会社としては撤退したものの運行の継続が図られることになり、出資していたANAの100%として、新たに「バニラエア」を名乗ることになりました。
そしてつい最近、エアアジアは改めて日本進出を図ることになり、中部国際空港を拠点として動き出すことになりました。既に関西空港はピーチが、成田空港はジェットスターとバニラエアが押さえている一方中部はまだ空白地帯だったため、勝算があったからだと考えられます。また、日本第4のLCCとして知られているのは、中国・春秋航空の日本会社である春秋航空日本です。こちらは本体の春秋航空が茨城空港に国際線で就航していることで知られているほか、日本国内では成田~広島・佐賀といったほかのLCCが就航していない路線にも飛ばしています。
私はピーチ、ジェットスター、バニラエアの3大LCCには搭乗したことがあります。機種はどれも同じエアバスA320で、座席配置もLCCでは定番の180席仕様ですからどれに乗ろうが変わり映えしません。しかし、そんな3社のうち2社が統合されるというのですから衝撃です。それこそ、冒頭に書いたようなローソンとファミリーマートがくっつくぐらいの衝撃です。
元々ANA系列だった2社ですが、統合によって名実ともに日本最大のLCCとなります。現在、それぞれで拠点が分かれていますが統合によって一元的に管理できるようになる上、関東・関西という2大拠点を共に押さえられることになります。そうなると、当然ジェットスター並びにJAL側もなんらかの攻勢を打って出なくてはいけなくなるでしょう。といっても、ANAは経営戦略の中でLCCもFSCと同じくらい重要視しているのと比べると、JALはジェットスター・ジャパンを積極的に大きくしていこうという姿勢はあまり見えてきません。既に路線網も大きいですし、かつてJALは経営破綻したことも記憶に新しいですから慎重に、あるいは着実に、堅実に守り育てていこうという考えもあるでしょう。本体であるANA、JALにしてもそうですが、この点が2社を大きく分けている部分だと思います。
ピーチとバニラエアの統合後はブランドや便名は「ピーチ」側に統一されるようです。つまり、バニラエアの名は失われることになります。元々エアアジアからいろいろあって誕生したバニラエアですから、あまり思い入れもないでしょう。一方ピーチといえば機体や服もショッキングなピンク色で、コールサインも「桃」からとってMMとしているぐらいです。今後も受け継がれていくことでしょう。関西拠点の会社というだけあって、機内放送でも最後に「おおきに!」と言っていたり、搭乗レシートにも「OOKINI!」と書かれています。こちらは、統合後には見られなくなってしまうかもしれません。あるいは、関西線だけで見られるようになるかもしれません。
思えば、ピーチが成田~新千歳線から撤退したのも、統合への前触れだったのかもしれません。既にバニラエアだけで十分本数がある区間ですからね。気になるのは両社が重複する成田~関西線。現在2社ともに2往復ずつ、計4往復飛ばしていますが、なんとバニラエア側は6月で運休してしまうようです。再開については決まり次第告知するとしていますが、これはそのまま統合されてしまう流れでしょう。ピーチ側での増便についてはまだ案内されていないようですが、何らかの形で補われるのではないでしょうか。あるいは、正式に統合への手続きが始まっていけば、塗装変更なども行われることになるでしょうからそのための予備機として確保するための運休になるかもしれません。
日本でのLCCは、まだ始まって10年も経っていません。しかしこれまでのわずか6年程度で何度も状況は変わり、そしてその間にすっかり足として定着してきました。2012年は、私が高校を卒業して大阪から東京に引っ越してきた年でしたが、それより前にLCCがあれば旅行していた範囲もきっと変わっていたことでしょうね。今となっては私もたびたび世話になっています。
2社の統合は2019年度末、つまり2020年になるとされています。空の勢力図もまた新たに塗り替えられることになり、次の10年が展開されていくことになるでしょう。ますます動向から目が離せなくなります。……ま、元も子もないことを言ってしまえば本当は高い金を払ってフルサービスキャリアに乗りたいんですけどね。