もうそんな時代なんですね……。上の写真は東海のじゃなくて西日本のだって?知ってるよそんなこと!
報道によれば、JR東海は700系新幹線車両を2020年3月までに引退させることを決めたといいます。つい先日N700S系が報道公開されたように、またこれまでもN700A系が製造されてきたように、新型車両が増備されるにしたがって700系が撤退することはこれまでも鉄道趣味者向けメディアでは報道されてきたことですが、具体的な引退の時期をもって報道されたのは今回が初めてだと思います。
700系が営業を開始したのは1999年のこと。もう今年で19年にもなるんですね。20年程度で廃車になるだなんて、「早すぎだろ!?」と少々信じられなくも思ってしまいますが、新幹線としてはこれが標準的な寿命なんですね。犬の10歳が人の60歳だと言われるように、新幹線車両にとっての20歳は在来線車両にとっての30歳、と。飛行機と同じぐらいですね。
毎日高速走行をし続けるので車両への負担が大きく寿命が短くなるというのはもちろんそうですが、東海道新幹線はJR東海にとっての最大のドル箱路線、いえ全世界の鉄道の中で最も稼げるフラグシップ路線ですから、当然車両も常に最新のサービスを提供するべきです。そういうわけで、車両が新しくなる周期が短いのです。
つい今年1月には、JR東海の700系に対する最後の全般検査が完了しました。在来線電車の8年と違い、新幹線の全般検査は36ヶ月、つまり3年以内に行わなければならないものですから、最後の編成であっても2021年1月以降は本線上を走れないということになります。
もちろん、東海道新幹線から撤退するというだけのことで、山陽新幹線ではまだまだ700系そのものは走り続けることでしょう。実際、これまでも0系、100系、300系、そして500系と全ての車両が東海道新幹線から一足早く撤退し、山陽新幹線からはそれを追うようにしばらく間を空けてから引退しました(300系はほぼ同時に引退しました。500系については別記事で書いたように事情が異なるのですが)。
ただし、それはあくまでも「ひかりレールスター用も含めた700系全体」としての話。300系がそうであったように、西日本にとって700系(の16両編成)が必ずしも使いやすい車両ではないので、遠くないうちに(少なくとも16両編成の列車としては)山陽新幹線からも撤退してしまうのでしょう。
東海道新幹線から撤退するということは、当然山陽新幹線から東海道新幹線に直通する列車からも撤退するということです。全てののぞみはもちろん、ひかりもほとんどN700系になるということです。今のダイヤでは山陽新幹線だけで完結するひかりはほとんど走ってませんからね。
しかし、その山陽内完結ひかりも、だいたいは西日本車両である「レールスター」仕様の700系です。そのレールスターですら九州新幹線直通のさくらが運行を開始してからはほとんど出番がなくなってしまったのですから、繁忙期の臨時列車などの特殊な事情がある場合でなければなかなかひかりとしての出番はありません。
ではこだまはどうかというと、ますます700系16両編成の価値はなくなってしまいます。そもそも山陽新幹線のこだまなんて一時期4両編成が使われていたほどでそんなに需要はないですから、16両編成なんて無駄も良いところです。「だったら編成を短くして……」と言いたくなるところですね。実際500系は編成を半分にしてこだまとして走っています。ですが、既にレールスター用700系と500系を合わせてこだま用の車両は十分足りています。しかも、レールスターには横2+2席配置の座席が多く、設備の面でも通常の700系より充実しています。もちろん通常の700系にもグリーン車がありますからもし編成を短縮することになれば500系同様グリーン車を普通車指定席用に転用するでしょうが、わざわざそこまでいろいろな改造をする価値やそうしなければいけない事情があるとも思えません。
のぞみもだめ、ひかりもだめ、こだまもだめとなると、当然残された道は廃車しかありません。つまり、東海道新幹線から撤退するということは実質山陽新幹線からも撤退せざるを得ないということなのです。まぁ、これまで十分稼いできた車両ですから、もう引退しても別にもったいないことはないのでしょう。
そもそも、これまでもJR東海は東海道新幹線から300系を撤退させるために、西日本に700系を譲渡してきました。これは西日本からも300系を撤退させるために東海が差し向けた車両です。「東海道新幹線から旧型車両を撤退させるには東海所属車両だけでなく西日本そのものからも撤退させなければならない」ということを分かっていてやったのです。同様のことをするとすれば、700系の撤退のために東海がN700系の初期車を西日本に譲渡する可能性も十分あるでしょう。
簡単にまとめるとこういうことです。
1.JR東海もJR西日本も、それぞれ独自に16両編成の700系を所有している。
2.JR東海は、乗り入れ列車も含めて全て700系を撤退させたいと思っている。
3.JR西日本は、車齢がまだ若めの700系を廃車にするほどではないと思っている。
4.しかし、JR西日本にとって乗り入れ列車以外では座席が多すぎるので使いどころがない。
5.もちろん、他社(JR東海)の事情だけでまだ使える車両を廃車にはしたくない。
6.そこで、JR東海はJR西日本に700系を廃車にさせるため、代わりのN700系を譲渡する。
お分かりいただけましたか?これは今の段階ではただの仮説ですが、300系が引退するときにはこれと同じことが行われたのです。
さて、もし300系のときと同じパターンで700系が撤退したとして、気になることはもう一つあります。それは「ドクターイエロー」用の車両です。現在使用しているこの検測用車両は、700系をベースにしています。もちろん最高速度などの仕様も700系に準拠しています。しかし、東海道新幹線がN700系以降の車両に統一され、曲線区間の通過速度や京都~米原などの一部区間の最高速度の向上によってダイヤ全体でスピードアップがなされると、ドクターイエローの遅さはほかの営業列車に対する足かせとなってしまいます。曲線速度も最高速度もどちらもたかが15km/h差ですが、日中の走行もあるわけですし3分に1本という高頻度運行が行われている東海道新幹線ですから15km/hであってもその影響は多大です。というわけで、今すぐにということはないでしょうがこちらもN700S系に準拠した新型検測用車両がやがて登場することでしょう。
既にのぞみではほぼ見られなくなり、「N700系がくればラッキー」だったこだまもいつの間にか逆転して「700系がくればラッキー」な状態になってしまいました。あと2年、私はどれだけ乗れることでしょうかね。