かねてより出版したいなぁと思ってるネタがあります。数多ある交通手段の中から、時と場合に応じてどれを選ぶか?という内容なのですが、その冒頭の展開で触れようと思っている内容に「日本人の移動好き特性」があります。
私のブログを見てくれるような人の中には既にご存知の方もいるとは思いますが、「世界で一番利用者の多い航空路線」は実は東京~札幌線なのです。日本一ではありません。世界一です。
年によって変動があるのですが、東京~札幌線が1位で東京~福岡線が2位だった年もあります。最新のデータでは、1位が東京~札幌線、2位がソウル~済州島線、3位が東京~福岡線、4位が東京~大阪線です。びっくりですね。上位に日本の路線が3つもランクインしている点もそうですが、ソウル~済州島もそれに匹敵するぐらいの利用者がいるんですね。
ただし、このデータは厳密には「利用者数」ではなく「販売された座席の数」です。つまりどれだけ空席が多くてもそれをカウントするという統計なのですが、もちろん多くの席が販売されているということはそれだけ多くの利用者がいるということでもありますから、実際の利用者数ランキングもあまり変わらないのではないかと思います。
たとえば、東京~札幌でいうと大手航空会社の日本航空と全日空がそれぞれ1時間に1本近い頻度で運航していますし、更に北海道国際航空(エアドゥ)も運行しています。加えて、このデータは両発着地それぞれが2空港、東京であれば羽田と成田、札幌であれば新千歳と丘珠が合算されていますから(東京からの丘珠線はありませんが)、成田発着のLCCも含まれています。ピーチ、ジェットスター、バニラエアが成田~新千歳線を運行しています。運行する全社を合わせればそれはそれは驚異的な本数になります。
さて、多くの座席数を支えているのは便数の多さだけではありません。飛行機の大きさもそうです。LCC各社は運行コスト削減のため統一した機材を使用しているので代わり映えしませんが、大手となれば別です。ピーチ、ジェットスター、バニラエアはいずれもエアバスA320型機を使用しており、各社ともに180席という仕様で運航しています。一方日本航空や全日空、エアドゥでは同じく単通路機であるボーイング737型機も使用していますが、東京~札幌という大幹線では双通路機である767型機のほか、国内線としては異例の777型機も使用しています。座席数は300席以上になります。
考えてみれば、日本の大手2社はかつて、ジャンボジェットと呼ばれた747型機で実質日本専用機材ともいえる仕様の747SR-100型機を飛ばしていました。いわゆる御巣鷹山の事故で墜落した機材です。500名以上が犠牲となった、単独機としては今でも最悪の死者数を記録している事故ですが、そもそも東京~大阪という直線距離で500kmにも満たないような国内線であのような巨大飛行機を使用しているというのは、世界的に見てかなり異例です。しかも、東京~大阪には強敵・新幹線があるというのに、それでも飛行機の利用者が多数いるのです。こちらも最新のデータによれば、東京~大阪の場合、新幹線の利用者は飛行機の約3倍もいます。
去年と今年、北海道の廃止予定駅訪問のため日本航空で帯広空港を利用したのですが、機材が767型機でした。日本航空の東京羽田~とかち帯広線は4往復あり(さらにエアドゥが3往復)、そのうち2往復が単通路機の737、残り2往復が767型機で運航されています。私は個人的に単通路機よりも双通路機の方が好きなので狙って767が使われる便を予約しました。今年の行きの便はさすがにがらがらだったのですが、去年の帰りに乗った便は年始の帰省シーズンが終わる頃ということがあってかなり多くの利用者がいました。
札幌、福岡、大阪といった大都市ですら双通路機を使うことは世界的に見てかなり異例なのですが、まして帯広などという一介の地方空港に767が使用されているのはもはや異常とすらいえるレベルです。たとえば、アメリカ国内線では767の兄弟機である757(単通路機、ただし胴体が長いため席数は767に近い)のほか、A320もよく使用されています。映画にもなった「ハドソン川の奇跡」の事故も、A320でした。大型機が使用されるのはニューヨーク~ロサンゼルスといった最重要幹線ぐらいのものです。
ヨーロッパに目を向けてみると、いくつもの国が密集しており航空需要はもちろん大きいのですが、ヨーロッパ内で運航されている域内線は99%以上が単通路のA320か737です。そもそも、双通路の777やA330は、大陸を越えるような長距離国際線で使用するというのが当然の考えなのです。
では国内線で大型機を使用している国がないのかといえば、そういうわけではありません。たとえば中国では、A380という巨大機を国内線で使用しています。ですが、中国大陸の大きさと人口を考えれば当然のことです。決して人口や面積は中国やアメリカに遠く及ばないにもかかわらず、短距離国内線に大型機が使われているという日本は、もはや「国民が移動好き」と言うしかありません、というのが私の持論です。
さて、「移動好き」を語るには、まだほかにもいくつかの面があります。機会を追ってまた書いていきたいと思います。