「EU」と「ユーロ」と「国境審査なし」は全部別物だ!

ヨーロッパ大陸。大小さまざまな国があり、日本と同程度の国や日本よりも大きい国もありますが、だいたいは日本よりも小さな国がいくつも集まっています。言ってみれば、アメリカにある50の州が全部国として独立しているようなイメージです。

古来より多くの人々の往来があり、国境線自体もたびたび変わってきました。近現代になり国境審査が明確に行われるようになると、国境を越えた移動は手続きの手間をとるようになってしまいました。

日本は陸地に国境線を持っていないため、海外へ行くには飛行機を使うか、船を使うしかありません。そのため出入国審査も空港や港で行います。特に空港では手荷物検査もありますから、出入国審査があるからといって負担感はあまり増えません。ですが、もしかつての関所のように、都道府県を越えるのにいちいち審査があるとすればどうなるでしょう?とても面倒ですよね。

ヨーロッパ各国もそれに近い事情があります。ベルギーとオランダのように、国によっては複雑に飛び地が入り組んでいる場合もあります。中には家が国境線の上に建てられており玄関の位置によってどちらの国かを決めているような場所もあります。

そういうわけで、今のヨーロッパでは多くの国同士を国境審査なしで移動することができます。ところが、多くの人が勘違いしていることがあります。それは「EU」や「ユーロ(通貨)」との混同です。

多くの国が密集していることを背景に、通貨も統一された「ユーロ」を用いている国が多く、またそれの通貨や国境審査などは政治的な共同体として「EU(Europa Union 欧州連合)」によって生み出されました。なので、「EUの国」と「ユーロが使える国」と「出入国審査がない国」は全て同じだと思っている人がいるようです。ところが!

「EUに所属している国」と「通貨がユーロの国」と「国境審査がない国」は全て違うのです!

そもそも、それぞれの取り決めはどのようなものなのでしょうか?

まず、EU。私も詳しくはないのですが……。EUの前身母体として、かつての「EC」も世界史で出てきましたね。簡単に言えば、ヨーロッパ各国を「1つの国」とみなした集まりです。ヨーロッパ各国全体の政治的な方針を決めています。日本でも行われている「G7サミット」には日本のほかフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダの7ヶ国が参加していますが、これとは別に「EU」もあたかも1つの国であるかのように参加しています。

ヨーロッパの国は東欧の小国でもない限りどこも参加しているように思ってしまいがちですが、スイスやノルウェーはEUには参加していません。スイスは永世中立国として有名ですしね。スイスは周りの国境をフランス、イタリア、オーストリア、ドイツとEUの国に囲まれていて、EUにぽっかり空いた島のようになっています。ちなみに、小国のリヒテンシュタインとも接していますがリヒテンシュタインもEUではありません。

続いて通貨の「ユーロ」。同じくスイスも使っておらず、独自の通貨スイスフランを使っています。「フラン」といえばかつてのフランスの通貨の方がはるかに有名でしたが、フランスはユーロ圏になってしまったため今ではフランといえばスイスフランになってしまいました。ほかにも、デンマークなどの北欧や、チェコやハンガリーなどの中東欧でも使われていません。

そして「シェンゲン協定」。シェンゲン協定というのは国境を越えるときの審査をしないことに関する協定です。これにはスイスも加盟しているので、ドイツ、フランス、イタリアなど周囲の国からスイスに入るときでも国境審査はありません。一方でイギリスなどは加盟しておらず、フランスからイギリスに渡るときは審査があります。

これらをまとめてみると……

●「EU」に加盟しているけれど「ユーロ」は使えない

イギリス※(ポンド)、デンマーク(クローネ)、スウェーデン(クローナ)、チェコ(コルナ)、ハンガリー(フォリント)、ポーランド(ズロチ)、ルーマニア(レウ)、ブルガリア(レフ)など

※イギリスはEUから脱退する予定です。

◎「ユーロ」が使えるけれど「EU」には加盟していない(上記と逆のパターン)

モンテネグロ※、モナコ、アンドラ、バチカンなど

※モンテネグロはEU加盟候補国です。モンテネグロはかつて独自の通貨を持たずドイツのマルクを使っていましたが、ドイツがユーロに切り替えたためモンテネグロもユーロに変わりました。

モンテネグロ以外は国土が極端に小さいミニ国家ばかりです。

●「EU」に加盟しているけれど「シェンゲン協定」には加盟していない

イギリス※、クロアチア※、ルーマニア※、ブルガリア※、アイルランド

※イギリスはEUから脱退する予定です。
※クロアチア、ルーマニア、ブルガリアなど未加盟の各国は今後加盟する予定があり、これらが実現した場合、アイルランドのみになることになります。

◎「シェンゲン協定」には加盟しているけれどEUには加盟していない(上記とは逆のパターン)

スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン

●「シェンゲン協定」には加盟しているけれど「ユーロ」は使えない

スイス(フラン)、ノルウェー(クローネ)、チェコ(コルナ)、ハンガリー(フォリント)、ポーランド(ズロチ)など

◎「ユーロ」が使えるけれど「シェンゲン協定」には加盟していない(上記とは逆のパターン)

アイルランド、モンテネグロなど

……といった感じになります。特に北欧ではクローネ・クローナ系の通貨を残しているところが多いですね。ギリシャ財政危機などでユーロに加盟するメリットがますます薄れたということもあるでしょう。また、移民問題を背景に個別に国境審査を行っている検問所もあり、今後シェンゲン協定に加盟する予定だった国も延期される可能性があります。

ヨーロッパを何ヶ国も周遊する人は、必ずこの問題に当たると思います。たとえばイギリスでは国境審査が厳しめだったり、非ユーロ国でも一部の店はユーロ払いに対応していたり……など。旅行の前にはチェックしておきましょう。

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