超広角レンズを使ってみよう!はまると抜け出せない8mmレンズの世界

本格的に旅行写真を始めようと思って早2年。一眼レフカメラを買ったのですが、そのとき揃えたレンズが3つ。キヤノンの8000Dという初級機と中級機の間の機種で今でもこれだけをずっと愛用しているのですが、標準ズーム(18-55mm)と望遠ズーム(55-200mm)がついてくるダブルズームキットを買いました。そして、もう一つ別で買ったレンズが今回の本題。

SIGMAのAPS-C機用「8-16mm F4.5-5.6 DC HSM」というレンズです(以下『シグマのこのレンズ』)。

8-16mm F4.5-5.6 DC HSM(SIGMA公式サイト)
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/others/wide/8_16_45_56/

 

カメラにこだわりのある人なら「なんだシグマか……」と呆れるでしょうが、一方で熱狂的なユーザーがいるのもまたシグマ。侮ることなかれ、このレンズはほかのどのメーカーも真似できない(真似していない?)極めて特殊かつ有能なレンズなのです!

※注意! このページで記載している焦点距離は基本的にAPS-C用のものです(一部35mm換算値も併記)

超広角レンズとは?

交換レンズは大きく3つ、「標準」「望遠」「広角」の3つに分かれます。簡単にいえば、より遠くのものを撮るのが望遠、広い範囲を撮るのが広角、そうでないふつうの写真を撮るのが標準です。あくまでも相対的なものなので、具体的に「焦点距離○○mmのレンズが標準」と決まっているわけではありません。ですが目安として、35mm換算で24mm以下が広角、80mm以上が望遠、その間に収まるのが標準といった具合です。

この焦点距離ですが、センサーのサイズによって同じ焦点距離でも実際の写り方は異なります。そこで、フルサイズ(35mm)以外向けのレンズでは「35mm換算」という数値が併記されることが多いです。

たとえば、シグマのこのレンズはAPS-C用のレンズなのですが、実際の焦点距離は8mm~16mmですが、できあがった写真は「フルサイズ機で撮った12mm~24mmの写真」と全く同じ写り方になります。

カメラ本体を買うにあたって8000Dを選んだ理由の一つは、シグマのこのレンズを使いたかったからというのが非常に大きいです。詳細は後述しますが、このレンズ、性能のわりに極めてコストパフォーマンスが良いのです

「SIGMAの8mmレンズ」はまさに”超広角の中の超広角”!

「超」広角といっても、やはり具体的に何mmのレンズが超広角だとは決まっていません。最初に書いた18-55mmのレンズも18mm側(換算27mm)で撮ればそれも「広角」の部類です。ですので、入門機や中級機によくあるAPS-Cであれば16mm以下(換算24mm)が「超広角」だと言われています。実際、シグマ以外の他社のレンズで超広角のものを探してみると、12mmだとか、せいぜい10mmだとかのレンズが「超広角」扱いされています。というより、10mm未満のレンズは魚眼レンズとなってしまい全く別の写真になってしまうのです。

そう、シグマのこのレンズは8mmでありながら魚眼レンズではないのです。実際私が買ったときも……

「シグマの8mmのレンズが欲しいのですが」
「魚眼ですか?」
「いえ、魚眼ではなくて……」

と聞かれました。「8mmで普通に写るレンズ」というのはよっぽど影が薄いのでしょうね。(とても素晴らしいレンズなのですが!)

8mmだとどんな写真が撮れる?

「説明はいいから写真を見せろ」って?ごもっともです。どんなに言葉を並べて良さを説明するより、実際の写真を見ていただければ一発でその凄さは伝わるはずです。

比較用に、標準ズームの18mmで撮った写真がこちら

ごく普通の教会の写真ですね。

そして、同じ場所から8mmで撮った写真が……

「うおっ!なんだこの写真は!!」と思わず声を上げてしまうことでしょう。そして、声を上げてしまったあなたはこのレンズを買わなければ気が済まなくなるでしょう。ぜひ画像をクリックして大画面でこの迫力を味わってください(勝手に転載しないでね)。

お分かりいただけましたか?8mmと18mm、たった10mmの差ですがこの違い。それもそのはず、8mmと18mmではこんなにも写っている範囲が違うのです。

そもそも当たり前のことですが、焦点距離は「倍率」の話なので足し算引き算はできません。「100mmに対しての50mm」の反対は「150mm」ではなく「200mm」なのです。画角で言えば、18mmのときの水平画角が約66度なのに対し、8mmのときでは約111度と大きな差があるのです!

8mmレンズでしか撮れない!数多の利点

8mmレンズの凄さは語りつくせないほどあります。それを一気にご紹介!

1.とにかく広い!大迫力!

私の超広角での代表作がこちら。

北海道らしい荒涼かつ広々とした大地を一枚に収めた写真です。とても気に入っていて、写真集の表紙に使いました。

同じ場所から16mmで撮影した写真ですが、この程度にしかなりません。16mmでも充分広角の範囲ですが、2倍も焦点距離が変わるとこんなにも違うんですね。

日本一高いビルもこの大迫力。「さすがにこんなに接近してると入り切らないかな……」と思いきや、あっさり全部入りました。それどころか、手前側のビルすら入り込んでいます。さすがに写真のふちに近づくほど歪んでしまいますが(それでも魚眼の写り方とは全く異なります)、そもそも縦向きで撮影した場合人間の視野すら超えた画角なので無理もないです(横向きなら人間の視野角とほぼ同じ)。ぜひ、同じ場所のグーグルマップのストリートビューで比較してみてください。

そうです、横向きの場合だと、人間の視野角とほぼ同じくらいの画角になります。つまり、「見えているものは全部写せる」ということです。それが次の利点。

2.接近戦で勝負できる!

超広角レンズの利点は、単に広い範囲を写せるだけではありません。逆に、近寄った状態で撮らざるを得ない状況であっても通常とかわらない絵を撮ることができるのです。コンデジやiPhoneなどのスマートフォンを含め、撮ろうと思って撮影場所に立ち、いざカメラを構えてみると「思ったより狭い範囲しか写らない……」という状況が多々あります。目で見えている範囲と、一般的なカメラで写せる範囲は異なるのです。そういった場合、離れて撮れば良いだけなのですが、場所によっては必ずしも離れられるわけではありません。

私のような鉄道好きにありがちなのが、駅のホームにある「駅名標」を撮る場合です。

駅名標というのはこういうホームにある駅の名前が書かれた看板のことです。これはまだ一眼レフカメラを買う前にコンデジで撮った写真ですが、だいぶ画面いっぱいになってますね。というより、正面からだと入り切らないので仕方なく横から斜めに撮っています……。だったら後ろに下がって撮れば良いじゃないかと言われそうですが、そういうわけにもいかないのです。

というのも、ご覧のようにホームがあまりにも狭すぎて下がるに下がれないのです。下がって撮ろうとしたら線路に落ちてしまいます。そこで、正面からきれいに撮ろうと思う場合、反対側のホームから望遠で撮るといった工夫が必要になります(下の写真)。

ところが!このシグマの8mmレンズがあればそんなことをする必要はありません!

上の写真を撮った次の年、いざ超広角レンズを手に取って同じホームに立ってみるとなんとびっくり!余裕で全部入り切りました!(駅名標のデザインが変わってるのは気にしないでください、路線の所属会社が変わったからです。)あまりにも余裕すぎて周りの風景も向かいのホームから撮ったときと同じくらい入りました。

“接近戦”のパターンはほかにもあります。例えば、イベントなどのため多くの人で賑わっているような場所。

車両にラッピングされたキャラクターの絵を撮るために多くの人が群がっています。人が激しく集中する場所ではなかなか思うように好きなポジションで撮ることはできません。かといって、「だったらほかの人が写らないぐらい近づいて撮れば良いんじゃない?」と思って撮ってみると(黄色の点字ブロックのあたり)、ご覧のありさま……。

iPhoneではさすがに無理がありましたね。というか、近づきすぎると入り切らないからみんな少し離れたところから撮っているわけです。ところが!そんなシーンでもシグマのこのレンズがあればなんと!

ばっちりきれいに収めることができました!持っててよかった超広角レンズ!余りにも近すぎる場所で撮っていたのできっと周りの人から(そんなところでおまえ何撮ってるんだ……?)と思われていたことでしょう。このページを見ているあなたは、今から超広角レンズを手に入れてライバルに差をつけましょう!

3.室内や大きな建物を全体的に撮れる!

さて、ここまでご紹介した利点は確かに素晴らしいものですが、工夫次第で一般的な標準レンズや広角レンズでも対処できることも多いです。ラッピング車両はイベントではない日に見に行けば好きなように撮れますし、駅名標なんて99%趣味でしか撮りませんからそもそも撮らなくても何も困りません。ところが、どうやったって超広角でしか対応できないようなビジネス撮影シーンもあるのです。

こちらは、駅の建物、つまり駅舎の内部を8mm限界まで引いて、目いっぱい広く写るように撮った写真です。「なんだ、こんなもんか」と思いませんでしたか?像のゆがみもあまりないですし、いつも見る写真に比べてこれまで紹介してきたような「超広角らしさ」は感じないと思います。

ちなみにこの建物を外から見るとこんな感じ。内部の写真に写っているところ(待合室の部分)はちょうど建物の右半分です。「また鉄道写真かよ!」と思ったかもしれませんが、この建物が「駅」ではなくただの「家」だとしたらどうでしょう?

そうです、もうお気づきの方もいるでしょうが、不動産写真は超広角レンズがなければ撮影不可能なのです。もし上の写真を標準レンズで撮っていたら、この程度しか写りません。

もし物件のパンフレットにこんな写真が使われていたら、「なんなんだこれは?もっと全体を見せてくれよ!」と突っ込みを入れてしまうでしょう(きっと撮影に予算をかけられない危ない不動産会社か、ただ下手な人が撮ったんだと思います)。先の写真に「超広角らしさ」を感じなかったのは、ゆがみが少ないこともありますが、きっとそれ以上に普段から不動産写真として見慣れていたからでしょう。当たり前のように目にする写真も、こういった”特別な”機材で撮られているのです。

ビジネス上超広角撮影が必要になるのは不動産だけではありません。超高層ビルもそうですが、観光ガイドなどでは外観の紹介でも超広角撮影が必要になってきます。

この程度の外観写真でも、8mm限界まで引いて撮っています。

もちろん引けば引くほどゆがみは増すので、適度にズームを調節することも必要です(こちらは11mm)。

ヨーロッパには観光名所としていくつもの大聖堂があります。世界最大のゴシック建築であるケルン大聖堂も8mmレンズがあればこの通り。ただこの規模であればかなり歪みが大きくなってしまうので、芸術写真ならともかく観光ガイド用の写真としてはかなり離れたところから望遠ぎみに撮るのが理想です。

4.写り込む人の印象を少なくできる!

何か特定のものではなく、漠然とした日常の風景を撮りたいときもありますよね。けれど人通りの多い町中の場合、どうしても誰かが写り込んでしまいます。しかし、超広角レンズがあれば……。

すぐ目の前にいる人も遠く離れたように見えます。その結果、写り込んでしまう人の印象を少なくすることができるのです。肖像権の問題もありますし、あからさまに他人の顔がはっきりと分かる写真って使いにくいですよね。本当に無人の状態を撮影しなければならない現場では早朝深夜の人通りがあまりない時間帯で撮影することもありますが、超広角撮影であれば日中の人通りが多い時間でもその印象を抑えつつ町中の風景を収めることができます。

8-16mm F4.5-5.6 DC HSMの欠点は……

そんな魅力的で迫力ある写真が撮れるシグマのこのレンズですが、欠点が何もないわけではありません。

欠点その1.暗い

商品名の通り、F値は4.5とかなり暗めです。もちろん露出やISO、撮影後の補正などでいくらでも対処できますが、ボケを生かした撮影には不向きです。とはいえ、超広角の画角とボケが両方必要になる機会はあまり多くはないと思いますけどね。

欠点その2.重い

レンズ単体で555gと結構重いです。もちろん望遠レンズにはこんなものより遥かに重いレンズも山のようにありますが、手頃な値段で買えるレンズとしては重い部類に入ると思います。ボディとセットで買った18-55mmの標準ズームレンズは215gですから、倍以上の重さです。レンズを付け替える際にはいつも特に気を使っています。

欠点その3.フィルターをつけられない

特殊な画角を得るためにレンズが構成された結果、最前面のレンズが思いっきり飛び出した曲面レンズになっています。そのため、カラーフィルターはもちろんレンズプロテクターも取り付けられません。傷つきやすいのに保護もできないというジレンマを抱えています。

実勢価格は5万円台!これは買うしかない!!

この8mmレンズ、APS-Cセンサー向けレンズでは最短の焦点距離を持ち、しかも唯一の存在です。SIGMA以外のメーカーにはこの焦点距離のレンズはありません(魚眼を除く)。

といっても、あくまでAPS-C用レンズの話で、フルサイズ用には換算で同等となる12mmからのレンズがあります。キヤノンはフルサイズ用に「EF11-24mm F4L USM」というシグマのこのレンズの画角をも上回る世界最広角のレンズを販売しています。

ところが!フルサイズ用の超広角レンズは往々にして一般人には手が出ないほど高いのです(望遠も高いですが)。EF11-24mm F4L USMの場合、お値段なんと35万円!高い!!!

一方シグマのこのレンズ、実勢価格ではわずか5万7千円程度!これならあなたでも買えます!

正直、この性能でしかも唯一無二の存在であるレンズが10万円を切る値段で買えるというのは価格崩壊を疑うほどの安さです。APS-C機材をお持ちのみなさん、この画角に惚れたらぜひ購入を検討してみてください!

実際に手にしてみると……

レンズの見た目はこんな感じ。横幅は10.5cmほど。手頃な値段のレンズとしては圧倒的な重厚感。実際手に取ってみると、その重さをずっしりと感じることができます。

レンズキャップを外すと、特徴的な曲面レンズが飛び出します。前述したように残念ながらフィルター類を取り付けることはできませんが、フードには一応溝が刻み込まれています。ちなみにこのレンズフード状のもの、取り外すことはできないので注意してください。

もう一つ注意事項として、このレンズは「右回しでズームイン」になっています。シグマのほかのレンズは多くが「左回しでズームイン」になっているので注意が必要です。また私のようなキヤノンユーザーの場合、ほかのレンズと逆になります(ニコンは右回しでズームインなので同様に扱うことができます)。

レンズはこのようなケースに入っています。これ単体でもレンズケースとして使えそうですが、ほかに物を入れられるほどのスペースはないので普通にカメラバックを使った方が良いと思います。

一度手にすると、二度と手放せなくなるSIGMA 8mmレンズ……!

ここまで読んでいただいたあなたは、もうその魅力の片鱗に触れられたはずです。きっと欲しくなったことでしょう。サードパーティ製ということで今までSIGMAレンズに手を出してこなかったあなたも、これから一眼レフを始めるというあなたも、ぜひ購入を検討してみてください。一度ファインダーから8mmの世界を覗いてみれば、間違いなくその価値は実感できます!

サードパーティ製レンズの購入にあたって注意したいのが、レンズマウントの確認です。カメラ本体のレンズマウント(取り付け部分)はメーカーによって異なります。Amazonなどネット通販で購入する場合、この「キヤノン用」「シグマ用」「ソニー用」「ニコン用」「ペンタックス用」というところから自分の機材にあったものを選びましょう。違うマウントを選んでしまうとそもそも接続できません。カメラマンにとっては常識ですが、同じレンズを複数メーカーの本体同士で流用することはできないのです(アダプターがあれば取り付けられますが)。これからカメラを始めるという人は注意してください。

さあ、あなたも”超広角レンズライフ”を始めましょう!

 

 

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