さようなら、三江線に行ってきました

旅の疲れもあって1週間ばかり更新をさぼっていましたが、三江線の最期を見届けてきました。なんというか、もちろん嬉しい思い出や楽しい思い出にはならないですし、悲しいことは悲しいんですけど、ただ悲しい寂しいという言葉だけで済むような気持ちでもなくて……。表現するのが難しいんですね。今までいろんな旅をしてきましたけど、間違いなくその中で最高の旅でした。言葉で一つ一つ表現するのは難しいので、映像で……。

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こちらは帰ってきてすぐ作っただけの予告編です。本編はまだまだなのでお待ちください。

旅をして思ったことは、こんなに多くの人が手を振ってくれているなんて、ということでした。実際に最期を見届けるまではこんなに多くの人が住んでいるなんて、こんなに多くの人がこのイベントに参加するなんて思いもよらなかったことでした。1日に1人も使わない駅ばかりなのに、どの駅にも手を振って見守る人たちがいたのです。川本町の公報で「(石見川本だけでなく)因原や木路原でのお見送りもお願いします。」と書かれていたのですが、因原はともかく木路原でそんな見送る人なんているのか?と思っていたのですが、夜遅くの最終列車でも見送ってくれている人がいました。

そして、この旅を経て今までと考え方が変わりました。「人々に愛されている」と「利用されない」は矛盾する概念ではなく両立するのだということを。今までも決して間違っているとは思っていませんでしたが、「愛されているならなんで利用されないんだよ、使われてないってことは愛されてないってことじゃないか」という考えに反論できませんでした。今までも内心は「そうじゃない、『愛される』ってことはそういうことじゃないんだよ」と思っていたのですが……。

誰しも、みんな自分が生きるために生活をしています。世の中に便利なものが登場して当たり前になってくると、逆にそれを持たない人は不便な生活を強いられ、周りから取り残されることになります。

今の世の中、携帯電話やインターネットは誰しもが使って当たり前のものです。逆に、それらを持たない人は人並みの生活が送れなくなりつつあります。

それが鉄道と一体どう関係があるのか?

鉄道が発明された頃、移動手段は徒歩か船しかありませんでした。川船ではあまりにも遅かった貨物輸送も、鉄道の登場によって大幅に輸送時間を短縮することができたのです。だから、日本中、いえ日本に限らず世界中の町や村が自分たちのところに路線が敷かれるのを待ちわびたのです。

ところが、時代が進み鉄道より更に便利なものが登場しました。自動車です。小回りが利いて好きなときに動ける自動車はあっという間に広まり、自動車を持っていることが前提の社会になり、やがて自動車がなくては生きていけなくなったのです。

職場に通うにしても、本数が少ないことはもちろん欠点ですし、そうでなくても必ずしも家や職場が駅の近くにあるわけではありません。駅を降りたからといってそこから接続するバスがあるわけでもありません。そして、この辺りは農業をしている人が多いわけですが、今時農産物や肥料などを鉄道貨車に積み込んで運んでいる人なんてこの沿線ではたった一人すらいません。

鉄道を使っていては、仕事をすることもできないのです。鉄道を使っていては、食べ物を買うこともできないのです。鉄道そのものは町にとって財産です。しかし、自分の人生を犠牲にしてまで鉄道を使うことはありません。なにより、一人が毎日乗ったところで残せるほどの収入にはなりません。

皆がそれぞれ自分たちのことを中心に、自分が生きていくために生活する。それはどこの会社であっても同じことです。鉄道会社もそう。JR西日本は一つの路線しか持っていない会社ではないですから、神岡鉄道や三木鉄道のように「廃線→会社解散」ではありません。ほかにも多くの路線を持っています。全体として生きていくには、自動車に負けた路線を捨てなければいけません。さもなければ、全てが死んでしまいます。

廃止が正式に発表されたとき、「役割を終えた」という文言がありましたが、まさにその通りだと思いました。

今まで数多くの廃線や廃駅を見届けてきましたし、これからも見なければならないと思いますが、私はこれから鉄道趣味を続けていくうえで「鉄道には役割を終えるときが来る」ということを心の底から受け入れられるようにならなければいけません。

まだまだいくらでも語れますが、なくなることそのものには悲しさや未練はありません。もう二度とこの地に列車が走ることはない。それは悲しいことですが、やはり受け入れなければなりません。廃線は、自然のものではありません。人が決めることなのですから。

鉄道趣味者として生きていく中で、自分にとって一番悲しいことは線路がはがされること。一番嬉しいことは手を振る人がいること。あらためて自分の気持ちを確かめられました。嬉しいことにしても悲しいことにしても、どちらもこみ上げる涙を抑えるのに必死でした。

とにかく、言葉にできません。これから最期を遺した映像を編集していきますが、それで見ている人に私の思いが8割ぐらい伝われば良いかな……と思います。100%なんてとても伝わらないですからね。

行って良かった、という気持ちが伝われば嬉しいかなと思います。

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