キハ40「北海道の恵み」シリーズ車両のデビュー
http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2018/180215-8.pdf
JR北海道が40系気動車を改装し、「北海道の恵み」シリーズとして定期列車に投入すると発表しました。
キハ40こと40系気動車といえば、日本全国の非電化路線で見られる普通列車用気動車です。私も各地の旅先で世話になってきましたが、老朽化が進み近年急速に姿を消しています。北海道もほとんどの非電化路線の普通列車がキハ40で運転されており(あとはわずかなキハ54かキハ150)中には電化区間でも運用される例もありますが、いい加減老朽化が見過ごせないほど深刻になってきたため、JR東日本の新型気動車と極力仕様を共通化させた新型車両「H100形気動車」を導入することを決めました。このH100形はつい先日落成し北海道入り、今後試運転を経て2019年から営業列車に投入される見通しです。
キハ40はいくつか細かな仕様の差がありながらも、JRの旅客6社全てに引き継がれた汎用性の高い車両となっています(JR東海からは既に引退しましたが)。その汎用性の高さを生かし、観光列車への改造例も非常に多くなっています。
特に大掛かりな改造がされた車両としては、有名なものでは五能線の「リゾートしらかみ」が挙げられるでしょう。人気が高く新造車両も投入されましたが、40系からの改造車も引き続き運行されています。
また、観光列車大国のJR九州でも多く活躍しており、性能の低さにもかかわらず特急車両として運行されているものもあります。九州新幹線開業と同時に運行を開始した「指宿のたまて箱」などがそうですね。
新型車両を製造するのには大きな費用がかかりますが、これらの列車は速く移動することを目的としたわけではなく、列車に乗ること自体を観光の一つとした列車であるため速度は要求されません。また、多くが快速や特急として運用されるため停車駅ごとの頻繁な加減速もないため、改造元の種車がキハ40のような加速性能の低い車両であっても大きな問題とはならないのです。
そしてこの「北海道の恵み」ですが、4両が改造されるようです。それぞれが道央、道南、道東、道北をモチーフとし各地区に配置、定期列車として運行されるということです。一部臨時列車としても運行される予定だということですが、定期列車としての運行が始まると、運用が固定されるわけでもないので狙って乗ることは難しくなると思います。
1両あたりの改造費は8500万円。4両で3億4千万円となり、経営規模の大きくない北海道としてはなかなかの投資だと言えます。新車ともなれば1両1億5千万~2億円ほどはかかりますからそれに比べるとずいぶん抑えられてはいますが、それでも一世一代の巨額の投資と言っても過言ではありません。なにせ無人駅を維持する何十万何百万円ですら惜しまなければならない状況ですからね。
北海道でキハ40改造車というと、北海道新幹線によって転換された元・江差線を運営する道南いさりび鉄道の「ながまれ号」を彷彿させます。道南に配置予定の「海の恵み」車両は函館まで乗り入れますから、並ぶシーンや両車が連携したイベントも見られるかもしれません。
道央、道南、道東、道北それぞれの運用範囲は被っていないので、改造後各地区に配置された後は定期運用中に2両以上が同時に見られることはありません。ぜひどこかで、4両が揃って見られる機会があるといいですね。きっと壮観だと思います。
私も過去に撮った写真を探してみましたが、ちょうど「道南 海の恵み」に改造予定の1809号車の写真がありました。2017年に廃止予定駅を訪問した際、この1809号車に函館~姫川と桂川~函館で乗り、今は亡き駅を訪問していました。この車両が新たな塗装をまとって走ることになります。
各社の派手な外装も見物ですが、個人的にとても注目しているのは内装の変化です。40系気動車のような国鉄車両は見ている分には趣味的には楽しいのですが、乗ってみるとけっこうぼろぼろで古いなぁと思わざるを得ないのです。特に雨や雪の日ともなると結構悲しいことになってしまうのですが、今回の改造では内装にも手が加えられ、椅子も生地が張り替えられ、床は木目調になるということで、とても期待しています。
北海道はこれからも利用者の少ない駅の廃止が進むでしょうから、私もなんども訪れることになると思います。乗る機会もきっと何度かあるでしょうから、新型のH100ともども味わえる日を楽しみにしています。改造されない残りのキハ40は新型車両の投入によって順次置き換えられていくと思いますが、この改造車はどれほど活躍が見られるのでしょうか?もしかすると、長ければ全般検査を迎えるまでの8年ぐらい活躍を見られるかもと期待しています。北海道にとっては大きな投資ですから、ぜひ末永く大事に走らせてほしいと思います。
なんでも今年は「北海道」と命名されて150周年だそうで、北海道にゆかりのあるさまざまな企業などがキャンペーンを展開しているようです。経営危機が叫ばれながらも、JR北海道は「ご当地入場券」の販売を始めたように、大きすぎない投資でファンを集める企画で工夫しています。私のような鉄道趣味者にとっては、一般観光客に向けたキャンペーンよりも、切符販売だとか定期運用される一般車両の魅力化だとか、そういうより「鉄道そのもの」に対するキャンペーンの方が響いてくるものがあります。ぜひ今後も、大地に足をつけながら着実に進んでいってほしいものです。