アビエーションワイヤーの記事によれば、LOTポーランド航空が2020年までに新たな日本路線の就航を目指しているとのことです。
LOTポーランド航空というのはポーランドのフラッグキャリアで、現在はポーランドの首都・ワルシャワから成田空港に週4往復で就航しています。設立は1929年と古くからある航空会社ではありますが、日本を含めたアジア路線が強化されたのはここ数年の話で、それまでアジア圏では北京ぐらいにしか就航していませんでした。今では東京・成田のほか、ソウルなどにも就航しています。
このようなアジア路線の強化ができたのは、同社が経営危機から立ち直ったという背景もありますがひとえにボーイング787型機のもつ効率の高さによるものだと思います。現時点で、ワイドボディ機は787型機しか所有していません。つまり同社の長距離路線は、全て787型機に依存しているというわけです。ワルシャワからのアメリカ路線、アジア路線などは787なしでは運行できません。
787型機は燃費などの効率が従来機に比べて高く、これまでA330や777のような大型機でなければ飛ばせなかった長距離をより小さい機材で飛ばせるようになりました。その恩恵は、LOTポーランド航空のように規模の大きくない会社だけでなく、大手航空会社であっても需要のさほど大きくなかった新たな就航地を得ることができたように、幅広い航空会社が受けられています。運航開始直後はバッテリーの問題から痛手を被った航空会社も数多くありますが、いまや世界の空にとってなくてはならない機材と言っても過言ではありません。
さて、記事によれば2020年までを目途に、羽田もしくは関西空港への就航を目指していると言います。現状、成田線も週4往復、今夏より週5往復となりますから、まずは週7往復、デイリーでの運航を実現するところから始まると思います。
羽田に就航した場合であっても成田線は存続させる考えだと言いますが、記事内では「観光需要は成田、ビジネス需要は羽田」という形で棲み分けを図るとしています。ですがよりはっきりした棲み分けが必要になるのではないでしょうか。正直なところ、仮に羽田に就航した場合、ポーランドや中東欧だけの需要だけで成田線が残せるとは少なくとも現時点では考えにくいものです。一方関空はと言えば、パリ線を抱えるエールフランス、フランクフルト線を抱えるルフトハンザですらデイリー運航を実現できていませんから、せいぜい週3便程度のものになると思っています。
羽田であれば、もちろん昼間の便数が逼迫しているということもありますが、成田線とは全く異なる時間帯、深夜運航を目指すべきだと思っています。とはいえ、羽田発が2時頃とした場合、まっすぐ飛べばワルシャワ着は朝の5時(冬ダイヤの場合)。乗り継ぎ目的でない場合、この早朝ワルシャワ着というのはなかなか利用者にとっては辛いかもしれません。
一方関西線を見てみると、フィンエアーが週5便、KLMオランダ航空が週6便、エミレーツ航空がデイリーでの運航を実現しています(いずれも現時点での冬ダイヤの場合)。またフィンエアーは今年から通年でデイリー運航を実現します。ヘルシンキ、アムステルダム、ドバイといった町に対関西で大きな需要があるわけではありませんから、いずれにしても乗り継ぎ需要を狙ったものだといえます。
そんなLOTポーランド航空ですが、なんと2027年には日本路線を週28往復にしたいというかなり壮大すぎる目標、というより野望があるようです。2027年にはワルシャワ近郊に新空港を完成させるとのことで、その時期に合わせてということのようです。この新空港、まだ全く情報が出ておらず、工事が始まっていないどころか正式な場所も決定していないようで、ただつい最近「新空港を作る」ということが決まったばっかりのようです。だいたいの場所としては、ワルシャワと南西の町ウッチの間とのことですが……。2027年の新空港完成に向けて、まず2019年に計画を完成させる見込みです。
http://www.thenews.pl/1/12/Artykul/334073,Polands-new-central-airport-due-in-2027-govt-says
週28往復となると、デイリー運航の路線が4本ということになります。具体的には、成田、羽田、関西とあと一つどこか、恐らく中部ということになるのではないでしょうか。同様に日本の多くの都市に就航している航空会社として、先述のフィンエアーが思い浮かびます。フィンエアーは現在成田、中部、関西、そして夏ダイヤのみ福岡に就航しています。また夏ダイヤでは、成田線がダブルデイリー(1日2往復)に増便されます。このフィンエアーの夏ダイヤで合計した便数がほぼ週28往復ですから、LOTポーランド航空はこれくらいの規模の会社になることを目指しているようです。
もちろんワルシャワはヘルシンキほどの立地に恵まれているわけではありませんから、壁は高いことは言うまでもありません。確かに日本からの距離は、ヘルシンキの次に近い大都市となればスウェーデンのストックホルム、その次となると、バルト三国をすっ飛ばしてワルシャワ、といえないこともなくはありません(かなり無理がありますが)。西欧についてはヘルシンキほどの利便性は見込みにくいですが、逆に中東欧、あるいはドイツ東部ベルリンなどであれば乗り継ぎ需要は十分開拓していける可能性はあります。ポーランドは旧東側諸国でしたから、同じく旧東側への路線網はフィンランドからに比べれば幾分か充実している……といえなくもありません。そもそも中東欧への需要が大きくないというのが一番問題かもしれないんですけどね。
中東の航空会社が大きな存在感を持ち始めたのもここ10年20年のことですから、10年後には今とは違ったまた新たな航空地図ができているかもしれませんね。