まぁ日本もそうなんですけど。
さてみなさん、私たち日本人が住んでいるこの国の名前、なんと呼んでいますか?そう、「日本」ですね。「にほん」か「にっぽん」かの問題は日本人でも悩むところですが、自分の国の名前の呼び方が2つもある国なんてほかにはそうそうないでしょう。まして、字は同じなのに読み方が違うなんて日本ぐらいなのではないでしょうか。
ところで、日本のことは英語でJapan(ジャパン)と呼びますよね。NihonやNipponではありません。いったいこのジャパンという言い方がどこから来たのかと考えてみると、「日」という漢字には「ジツ」という音読みがあります。今の日本語でもこの漢字自体は「ジッポン」と読めますから、かなりジャパンと近いことが分かるのではないでしょうか。
英語以外の言語でも、表記はJapanと近い言葉になっています。ですが、表記は近くても読みは言語によってかなり違います。英語ではジャパンでも、フランス語ではジャポン、スペイン語ではハポン、イタリア語ではジャポーネ、ドイツ語やセルビア語ではヤーパン、ロシア語ではイポーニヤと読みます。ドイツ語の場合、表記は英語と全く同じく「Japan」なのですが、ドイツ語ではJはヤ行の音で読みます。アクセントも違いますね。
自国語で自分の国のことを呼ぶ名前と、まわりのほかの国がその国をことを呼ぶ名前は異なることが多々あります。たとえば、フィンランド(Finland)は自国のことをスオミ(Suomi)と呼びますし、クロアチア(Croatia)は自らをフルバツカ(Hrvatska)と呼びます。ハンガリー(Hungary)はマジャル(Magyar)ですね。ジャパンが本国では日本と呼ばれているのと同じです。
有名な大国にもかかわらず本当の名前で呼んでくれない代表ともいえる国がドイツ。行ったことはなくても、誰でも名前を知っているでしょう。そして、英語では「ジャーマン」と呼ばれていることも多くの人が知っています。「ジャーマンポテト」とかありますね。私は小学生のとき、リコーダーの「ジャーマン式」「バロック式」で知りました。
一体ジャーマンという言葉がどこから来たのかといえば、Germanをローマ字読みすればすぐに分かります。ゲルマンから来ているんですね。ところがドイツに住む人々は自分たちの国のことをジャーマンとは呼んでいません。フランス人は自分の国のことをフランスと呼びますし、イタリア人は自分の国のことをイタリアと呼びます。スペインは”エスパーニャ”ですがまぁ”スペイン”と近いですね。
ドイツでは自分の国のことを「ドイチュラント」と呼びます。Deutschlandと書いてドイチュラントと読みます。ドイツ語では母音の「eu」を「オイ」、子音の「tsch」を「チュ」と読みます。日本語では「チュ」ではなく「ツ」ですが、本国の呼び方とかなり近いですね。私は親しみを込めてときどき「どいちゅ☆」と呼んでいます。かわいらしいですね。
ですがかわいそうなことに、ドイツは周りの国々から別の呼び方をされています。先に挙げた英語もそうですが、例えば……
・英語では「ジャーマン」
・フランス語では「アレマーニュ」
・スペイン語では「アレマニア」
・ロシア語では英語と同じく「ゲルマニヤ」と思いきや形容詞では「ニェメツキー」
・イタリア語も同じく「ゲルマニア」と思いきやなぜか形容詞では「テデスコ」
はるか遠く極東の日本語の方が、本国の呼び方に近いのはびっくりですね。「テデスコ」とはなんだか巨大倉庫で商品を売ってる外資系スーパーを思わせますが……。形容詞というのは「ドイツの○○」のときに使う形で、「ドイツ人」や「ドイツ語」を意味する単語にも名詞として使われます(英語でいう「Japan」と「Japanese」の関係ですね)。
アレマーニュというのは、ゲルマン人の中の更に細かい分類、アレマン人という部族の名前から来ているそうです。
さらに続きがありまして……
・ポーランド語では「ニェムツー」
・フィンランド語では「サクサ」
・デンマーク語やスウェーデン語では「テュースクラン」
悲しいかな、誰も「ドイチュ☆」とは呼んでくれないんですね……。一番近いのはオランダ語の「ドイツラント」のようです。日本は鎖国時代でもオランダと貿易していましたから、もしかすると日本語の「ドイツ」という言葉もオランダ語から来ているのかもしれませんね。かくいうオランダも現地語では「ネーダーラント」なのですが。伝聞を経るうちに元の呼び方とかけ離れてしまった、というのは世界中どこでもあるんですね。