どこもかしこも人手不足……人手はどこに?君の胸に!

わりと真面目な記事(タイトルが真面目じゃないですが)。

「人手不足」を考えさせられる瞬間、多々ありますよね。自分のすぐ身の回り、アルバイトなんかでもそうですが。

よく「運輸業はもうずっとどこも人手不足」なんて言われてます。トラック業界なんかが深刻だって言いますよね。夜行バスも、長時間労働が問題になってました。地方の足を担うバス会社も運転手の高齢化が深刻だといいます。

じゃあ鉄道はそうじゃないのかというと、それがやはりこちらも人手不足のようです。JR東海の東海道新幹線運転士が、有給休暇が思うように取れないとして会社を提訴していました。

JR東海社員「希望通りに有休が取れない」取得率8割超でも提訴…裁判のポイント
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171215-00007100-bengocom-soci

今のところ人手が足りないからと言って運休したり本数そのものが減らされるようなことはなく、表面上は特に何もないように見えてはいますが、実際にはいろいろとあるようです。

そして空の上はどうかというと、こちらもだいぶ深刻な様子。特に北海道のAIR DOなんかは機長(パイロット)不足だと公言して運休させているのが常態化しています。中には札幌~岡山線のように、路線そのものを廃止せざるを得なくなったパターンもあります。決して乗客が少ないから廃止になったわけではなく、飛行機を動かすための従業員が足りずに廃止になったのです。その証拠に、札幌~岡山線はAIR DOの撤退後ANAが穴埋めで飛ばすことになるのです。これまでAIR DO便に対してANAがコードシェアをしていましたが、ANAが自社で飛ばす形に変わります。

AIR DOは路線廃止によって、機長や副操縦士を育成する時間を確保するといいます。飛行機の免許は機種ごとに決まっていて、鉄道車両や自動車のように日によって変えることができません。AIR DOは737と767の2機種だけしか保有していませんが、今日は737を飛ばして明日は767を飛ばす、ということはできないのです。両方の免許を持つこと自体は可能ですが、それでも自由に乗れるわけではなく、別の機種に移行する際は何日かの習熟期間をおかなければいけないことになっています。これは、飛行機の機器の細部は機種ごとに異なっており、同じ操作をする場合でも同じところにスイッチやレバーがあるわけではないという理由です。「スイッチの場所が違うぐらいなんでもないじゃないか」と思うかもしれませんが、そういった細かい機器の操作ミスによる大事故がこれまで何度も起きてきました。自由に乗れる飛行機を選べないというのは、安全のため世界中どこでも決められていることです。

では代替で飛ばすことになったANAは人手が潤沢にいるのかというと、これもまたそうではないでしょう。確かに採用試験の場だけを考えれば、大手航空会社はいつも大人気でたくさんの人が応募します。ただ、それだけでこの先を乗り越えていけるわけではないということは、会社もよくわかっているはずです。なんでも、今まで人手をかけていた部分の機械化に関する投資に年間100億円もの大金を投資していくようです。

ANA、手荷物搬送や案内にAI・ロボ 年100億円投資
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24638480U7A211C1TI1000/

そして今日になって、「春休みの引っ越し繁忙期に人手が足りない」というニュースが飛び交ってきました。3月末や4月頭は引っ越し業界の最繁忙期ですが、もうとっくに予約がいっぱいで、取れたとしても40万~50万円もかかるという壮絶な状況になっているようです。私は今のところ引っ越し予定はないので無縁ですが、これも運輸業の一部です。

年末には、ゆうパックに集荷が殺到して「コミックマーケットの会場に頒布物が届かないかもしれない」といってだいぶ話題になりました(私が送ったときは何もありませんでしたが)。そもそもゆうパックに集中した理由は、ヤマトが人手不足で運賃を値上げする中、ゆうパックも追随するように値上げを決めたのですが、ゆうパックの値上げが少し後になったため「今ならゆうパックの方が安い」とこぞって利用者がゆうパックを使ったからでした(コミケは前からゆうパックを指定していて業者を選べないのでヤマトは使えないんですよ)。

なるほど、ここまで見ていくと、確かに運輸業界はなかなかひどい人手不足だということが分かってきますね。自動車も鉄道も航空もだめです。では運輸業界以外なら……そう思いますか?

牛丼チェーン店が人手不足で、深夜営業や24時間営業をとりやめる店舗が増えたって少し前に話題になりましたよね。ファミリーレストランも、これまで24時間営業や早朝5時まで営業していた店が2時まで、あるいは0時までの営業に切り替えることが多くなってきました。コンビニだってそうです。店員募集が思うように集まらず、フランチャイズのオーナーが自ら出ずっぱりになり困窮しているという話もたびたび聞きます。

ホテルチェーンなんかもそうですね。これから2020年に向けて外国人客も増えており新設されるホテルも多い中、従業員の確保にはどこも苦労しているようです。

 

……なるほど、どこもかなり苦労しているんですね。では一体、人手はどこに行ってしまったのでしょう?

どこか人手がいっぱい溢れている大人気の就職先があるのでしょうか?それとも、現場に人手が足りていないだけで、外からはあまり見えない営業や企画開発、事務といった職種には人がいっぱいいるのでしょうか?それとも、実は海外からヘッドハンティングされている人材がいっぱいいて、多くの人が海外に勤務することになってしまったりしているのでしょうか……?

難しいところですね。ここからは私の個人的な見解になりますが……。いくつも理由があるとは思います。

まず一つ。人口そのものが足りていないこと。この人口というのは「生産年齢人口」のことです。要するに、働ける年齢の人、ちっちゃい赤ちゃんやお爺さんお婆さんではない人たちのことです。後述しますが、恐らく需要はそれなりにあるはずなんです。需要はあるけれど、供給する側の人口が足りていないんです。高齢者が多いというのはもうずっと前から言われていることですよね。生産年齢人口、だいたい20代から60代ぐらいまでの人たちは、確かに自分たちも何かを消費する側ではありますが、その一方で働いて何かを生み出しています。しかし、年をとると働くのはだんだん難しくなっていきます。そうなると、何かを消費はするものの生産はできなくなってしまいます。そんな「消費するだけの人」の割合が増えてくると……当然生産する側の負担は大きくなってきますよね。ですが、需要があって手に負えないだけであれば、赤字で困る、ということにはなりにくいはずで、単に受け入れきれない人が増えるだけで終わるしかなくなります。

もう一つは、働き方がますます多様化していること。いわゆるフリーランスと呼ばれている人たちです。インターネットで広告を出してお金を稼いだりする人、よく聞きますよね。YouTuberと言われている動画作者なんかもそうです。そんな人たちもフリーランスの仲間ですし、弁護士や税理士といった士業、あるいは○○コンサルタントと呼ばれている人たちもフリーでやっている人が多くいます。決してフリーランスは楽なものではありませんが、それで生きている人たちは会社勤めをして現場仕事に駆り出されるより、多少の困難があってもフリーの方になにかしら魅力を感じているからやっているのです。決して「単に楽だから」という理由でフリーランスをやっているわけではありません。フリーの方がつらいこともかなりありますからね。ただ、総合的に見て精神的に楽だ、とかそういうメリットはあるのだと思います。

そして最後。これが一番大きいと思っているのですが、それは「数が多すぎること」です。「仕事場の数が多すぎる」のです。先の話に戻りますが、特に東京のような大都市にいると、牛丼屋が密集していませんか?コンビニも同じ場所に大量にあります。ファミレスも多いですし、飲食店全体でみるとそれはそれはもう大量にあります。

なぜそんなに店舗が大量にあるのか、それは調べればわかることですが、かつての戦略によるものです。ある一地域の売上を一社で独占するため、近接した場所に同じチェーン店をいくつも置くのです。そうすると、一店舗あたりの利益は地域内で分け合う(というより奪い合う)ことになりますが、全体として見ればその地域の売上は全て一社で独占することができます。「他社に入り込まれる隙をなくすため」なくすためという理由で、大量集中出店していたのです。東京だけではないと思いますが、交差点の向かい角に同じ系列のコンビニが2つたっていて、しかも目視できる範囲で少し離れたところにまた2店舗も3店舗もあったりするのです。もうほんとびっくりしますよね。ただ、気軽に人を採用できる時代が終わりそんな営業形態がだんだん通用しなくなってきたのです。

新しく開業したラーメン屋の40%が1年以内に閉店しているようです。なんでも、毎年開店する店舗と同じ数だけの店舗が閉店しているのだとか。考えてもみてください。あなたが新しく飲食店を始める事業者だったとします。

「よーし、頑張って売れるぞ!どこも競争と人手不足で厳しいけれど、自分の店は繁盛させるぞ!」

みんながそう思って開店します。「潰れる側の40%でいいや」と思って始める人はいません(いなくはないかもしれませんが、そういう人は趣味や慈善事業でやっているパターンです)。全員が儲かるはずがないのに、みんながみんな「自分は売れる」と思って始めるのです。当たり前ですが、誰かには負けてもらうしかありません。全員が勝てるわけがないのです。

コンビニのフランチャイズオーナーだってそうです。上手くいけば利益をあげることができます。オーナーを始める人は、みんながみんな自分はやれると思って始めるのです。ですが、全員が上手くいくことはないのです。

あくまで理屈の上の話ですが、この世の赤字額と黒字額は同じなのです。理論上は。実際には手数料や廃棄といった意味合いで少し赤字の方が大きいかもしれません。誰かの利益は誰かの損失によって生まれているのです。FXなんかが分かりやすいですね。誰かが株やFXで利益を出していれば、ほぼ同じ金額損をした人が必ずどこかにいるのです。

話を戻して。

これからは、仕事場の数を減らしていかなければなりません。単に減らすのではありません。減らしたうえで、各仕事場の従業員を増やしていくのです。確かに今まで近くにあったコンビニがなくなって遠くまで行かなければならなくなったら、不便になります。宅配便が当日に届かなくなったら、不便になります。ですが、それで良いのです。それを不便だと思ってはいけません。もし不便だと思うのなら、あなたは同じだけの便利さを誰かに提供できますか。自分の胸に一度聞いてみてください(あっ!タイトル回収できた!)。

「だから便利さを金で買っているんだ。」確かにそれはそうですね。誰かに提供できないからこそ、金という形で対価を出しているのです。それは当たり前ですね。ですが……足りません。その金額ではこの便利さは買えません。

ロンドンやパリって大都市ですよね。でもコンビニなんてないんですよ。日曜やクリスマスには全ての店が閉まるんですよ。地下鉄も休むんです。ですが、それは不便ではありません。日本と同じくらいの一人当たりGDPを稼いでいるドイツのような国でも、休暇があって一人当たりの労働時間は日本よりもずっと少ないんですよ。少ない時間で同じ稼ぎを得る、とても効率がいいと思いませんか?

まぁ諸外国にはその国なりの問題があるので海外に行ったからって何もかも環境が良くなるわけではないんですけどね。

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