初めて三江線に乗ったときのお話・後編

(前回のつづき)

駅と駅の間の途中の線路で降ろされてしまい、タクシー代行になってしまいました。川平は江津からたった3駅目。3駅しか進んでいないのに、残りの全区間が代行になってしまいました。もちろん、タクシー代行では三江線を乗車したことにはしていないので、全線乗車の達成ができなくなってしまいました。

いえ、そんなことぐらいならまだ良かったかもしれません。大晦日であるこの日じゅうに、なんとか広島に辿り着けるでしょうか。代行されるにあたり、行先を聞かれました。3人の乗客のうち、1人の男性は次の川戸で、もう1人の女性は口羽で降りると言っており、私は広島までと言ったのですが、三次まで行けば芸備線があるので三次まで代行されることになりました。

元々の予定では、三次から福塩線回りで広島に向かうつもりだったのですが、背に腹は代えられません。芸備線で直行するなら余裕があります。途中浜原でタクシーを交換することになり、数時間かけてひたすら夜の江の川沿いの道を突き進んでいきました。メーターに表示されてる金額はよく覚えていませんが、少なくとも私個人で払える額はとっくに超えていました。少なくとも8000円は超えていたでしょうか。

そして、三次に近づくにつれ、嫌な予感がよぎります。広島への最終列車に間に合わないのではないか……。元々三江線の列車は遅いのでタクシーで行ったところであまり遅くなるわけではありません。しかも途中駅は全部すっ飛ばしていますから、なおさらです。しかし不運だったのは、立ち往生していた時間そのものがあまりにも長かったということです。列車が運行不能になり、代行タクシーが手配され、実際に乗り付けるまで相当な時間がかかっていたのです。その時点で運が尽きていたのでした。

三次に着いたものの、無情にも最終列車は既に出ていました。22時40分ぐらいだったでしょうか。大晦日の夜にして行き着く先を失ってしまったのです。さてどうしたものか。

近くにマクドナルドがあるのですが、24時間営業ではありません。ヒッチハイクでもしようかと思い、マジックペンをそのマクドナルドまで借りにいったのですが、やめました。また駅に戻り、ただ時間が過ぎるのを待ちます。広島から三次に来る列車はまだ動いていました。どうして反対行きのが来ないのか……と恨めしく思っていました。

とうとう日付を跨ぎ、年を越してしまいました。そしてついに、広島から三次へ来る最後の列車も到着してしまったのです。駅が閉められる時間になったのです。

どうすることもできなくなり、駅の前の道に座ることしかできませんでした。広島まで行けていれば、今ごろ終夜運転で宮島に行っていたのに……。時刻表を見てみると、元日ということもあって芸備線にも臨時列車が出ていました。しかし三次からではなく、確か志和口からだったと思います。タクシーに志和口までの運賃をてみたものの、中学生だった自分に払えるような額ではありませんでした。もちろん歩いていけるような距離でもありません。歩いていれば、数駅も進まないうちに始発列車の時間になってしまうでしょう。

ときおり雪がちらついていました。2日前、白馬の駅で転んだときの右手のけがに冷たさが染みます。一人で旅をしていると、何やってんだろうなぁ……って思うことが今でもよくあるのですが、このときほどそれを感じたことはありません。ただ、駅前に座って寝ていました。

夜中の3時くらいだったでしょうか。駅前に車がとまり、人が降りてきました。そのときはもうあまり気にしないでほしい気分だったのですが、捨てる神あれば拾う神あり。見かねた私を家に連れてくれたのです。駅のすぐ前で喫茶店をやっているということで、暖房のきいた温かい部屋で始発列車まで待たせてくれました。ただ静かに温かみを感じていました。飼われている猫が私の周りをぐるぐる歩いていました。

なんでもその方は東京から三次に来たそうで、酒蔵を買い取ってそれをいかした活動をしていきたい、といっていました。

その後、暖かい朝を迎え始発列車で広島へ向かった私は、すっかり疲れ切ってしまいフリーきっぷで周遊する計画を捨てて一気に大阪に帰ってきてしまいました。正確には、広島に着いたときに前日下関で車内に忘れたデジタルカメラが見つかっていないか問い合わせたところ、下関で保管されていることがわかり一度取りに行ってから大阪に帰りました。新幹線乗り放題のきっぷを持っていて良かったと思います。そうでないから広島から下関に寄って大阪に帰るなんて疲れた中やる気は起きなかったでしょうからね。

残念ながら、途中で列車から降りた写真はありません。カメラを紛失していた間に起きてしまったことですからね。もっとも、紛失していなかったとしても、その後パソコンのデータを吹っ飛ばしてしまったので今は残っていないと思いますが。

そして、三次駅の駅舎建て替え、駅周辺の再開発が行われ、駅を出て西側にあったその喫茶店のあった場所は、今ではロータリーと観光案内所になっています。どこか跡形はないのかなぁ……と思って昨年12月に三江線を訪れたときに探したところ、反対の東側に真新しい喫茶店があり、名前もそのとき聞いたような気がする名前でした。

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