奈良の県庁を橿原に移転することが可決されたんですって!
橿原へ県庁移転を 決議案可決し閉会 /奈良
https://mainichi.jp/articles/20180324/ddl/k29/010/539000c
このタイトルだと「反対が多数だったのに無理矢理押し通して強引に承認したあと逃げるように閉会してしまった」みたいに見えますが、ただ議会で移転が承認され普通に会期が終わっただけのようです。
日本のみなさん、小学生のときに都道府県の名前や県庁所在地の場所を覚えたことでしょう。だいたいの都道府県では県名と県庁所在地の市名が同じですよね。ちょっと詳しい人なら「名前が違う県は江戸から明治になるとき反体制側にどうこう~」ってのを知ってるかもしれません。
現在、都道府県名と県庁所在地名が一致していないのは札幌、盛岡、仙台、水戸、宇都宮、前橋、さいたま、横浜、甲府、名古屋、金沢、津、大津、神戸、松江、高松、松山、那覇です。さいたまを「県名と市名が別」と判断しているのはひらがなだからではなくて、元が浦和市だったためです。
このうち、宇都宮、甲府、那覇については「県名と同じ市があるのに県庁所在地が別の都道府県」にあてはまります。それぞれ栃木市、山梨市、沖縄市も存在するのです。かわったところでは、横浜と神戸にはそれぞれ神奈川区と兵庫区があるのですがこれはまた別の事情。そして、これに奈良が加わることになります。これまで、奈良県奈良市が県庁所在地だったものが、奈良県橿原市に変わります(移転したからといってそれぞれの市名が変わることはないでしょう)。
移転することを決めた一番の理由は、単に「今まで県の端っこすぎた」というだけのようです。元々、奈良県は人口の9割が北半分に住んでいます。大阪のベットタウンとして発展して以降(実際一時期堺県に取り込まれていたわけですし)、奈良市のほか郡山、王寺、香芝、高田、生駒、そして橿原といった町はそれぞれ住宅地として人口を伸ばしています。王寺や平群なんかは市制施行しても良さそうなものなのにしないんですねこれが(しようとしたこともあるんですが)。
一方で南半分はというと、まともな町、というか市は五条しかありません。あぁ、例の和歌山線か……となるところです。交通の面でも正直かなり不便で、大阪へ出るには王寺まで和歌山線で回っていくか吉野口で近鉄に乗り換え、もしくは一度和歌山に入って橋本から南海ということになります。もちろん奈良市に行くのももっと不便で、やはり王寺まで出るぐらいしかありません。
南半分のうち残りは、一大観光地として有名な吉野がありますが、それ以外はもう本当に山しかなくせいぜい十津川の温泉ぐらいのものです。私も奈良には親戚が住んでいたこともあって何度も行ったことがありますが、十津川なんて未だに一度も行ったことがありません。吉野はありますが、五条で改札を出たこともないと思います(有名な長距離路線バスがあるので一度十津川に行ってみたいとは思っているのですが)。
では奈良県の県庁所在地である奈良市はどこにあるのかというと、県の一番北にあります。鉄道好きには有名な話で「JR奈良線は奈良県を通っていない」というのがあります。大和路快速や学研都市線でよく「木津」や「加茂」という駅名を聞くでしょうが、実は両方とも奈良ではなく京都なんです。木津は奈良から2つ隣りの駅ですが、そこから先はもう京都に入ってしまうのです。
なるほど、確かにだいぶ端の方にありますが、本来はだからといって別に県庁を移転するようなものではないはずです。別に県庁が県の端にあってはいけないことなんてありません。和歌山や大津なんかもどちらかといえば端の方ですし、新潟なんかも県南西部からでは奈良の日じゃないほど遠いです。というのも、大半の県民にとって用があるのは市役所や町役場であって県庁に行く用事はそうそうないからです。例外がパスポートの申請で、パスポートセンターは県庁周辺でしか受け付けていないことがあります。運転免許の試験場なんかもそうですね(これは県庁所在地というわけではないですが)。
運転免許試験場といえば、鳥取の例が有名です。県庁のある鳥取市は東端ですが、西の端にも米子市という大きな町があります。どちらにも空港があるほどの大きな町です。そこで、試験場は間をとって倉吉にあるのです。噂で聞いただけなんで本当にそんな理由なのか正確なことは知りませんが。
なんでも、奈良県庁が移転する理由は「リニア中央新幹線が開業する中で今後奈良が偏重なく発展していくため」だと言います。単純にリニアの恩恵を受けるためだけならどう考えても奈良市のままの方が良いはずです。リニア駅は奈良と京都の県境付近にできるため、今のままの方が駅からは圧倒的に近いです。
ただ、発展というのはそういう意味で言っているのではなく、リニア云々関係なしに次の半世紀が良いものであるように、というだけのことです。まぁ確かに県北部全体で見れば突出して大きな町があるのではなく中規模の町がいくつも並んでいるような感じですし(観光面では圧倒的に奈良市優位だとは思いますが)、何より県全体で見れば奈良よりかは橿原にある方がまだましです。それでも遠いんですけどね。
ところで、私のような鉄道好きの観点からすると、沖縄以外で県の中心駅にJR線が通っていないという異常事態になります。橿原市の中心駅は橿原神宮前……と思いきやそうではなく、大和八木です。市役所もすぐ近くにあります。元々近鉄の天下でJRなんかあってないようなものの奈良県とはいえ、民営化以降着実に利用者を伸ばしてきたJRを根本からぶち壊してしまいます。ま、別に移転したところで奈良市の人が全員引っ越すわけでもないですし、現状天皇陛下ですら京都で新幹線を降りた先はJRを使わずに近鉄に乗り換えてしまうぐらいですから今更どうこうもないんでしょうけどね。
……え?桜井線?そんなのもありましたね。橿原市役所は畝傍駅がすぐ近くで便利なんですよ。列車は1時間に1本しか来ませんけどね。
むしろ県庁移転を機に畝傍駅を橿原駅に改称して増発でもしてくれれば良いんですけどねぇ。畝傍という由緒ある名前を捨てるのには多少の抵抗がありますが、やはり近鉄側に畝傍御陵前駅があるのでこっちはいっそ改称してしまってもいいでしょう、きっと。
そういえば、県庁を立てる余地なんてあんまりないと思うんですけど、藤原京跡地の上にでも建てちゃうんでしょうかね?